野球

お昼は池袋、夜は町田、綾奈ゆにこです。どこにでも行く。


舞台「野球」飛行機雲のホームラン(作・演出:西田大輔さん)

とても素晴らしかったです。すべり込みで3回観られた。

戦時中の球児たちの話。休憩はさんで2時間半ほどあるにも関わらずあっという間で、大変面白かったです。始まり方、シーンつなぎ、緩急、試合の見せ方、情報の出し方。初見は終始、気を抜けず緊張して観たけど、後でじわじわ、また観たいと思った。

ずっとこの試合を観ていたい、終わらないで、と祈るように観ていた。

(以下、ネタバレを含みます)


現在の試合シーンに過去や未来のシーンが差し込まれる。構成を把握するまではちょっと難しく、3回観た今でもきっと100%は解っていない。

でもそれが、もっときちんと把握したいという欲求に繋がっていて、ここ数日ずっと「野球」のことを考えている。


東京楽の前夜は、予科練について調べた。

一番知りたかったのは、3番遊撃手の佐々木くんが何に志願したかだ。ふつーに考えればみんなと同じ特攻隊だが、彼は視力検査で一度はじかれている。飛行機には乗れない、はず。と思って、輜重兵(しちょうへい。前線への補給を担当)の方かなと思ったが……出来るなら、彼もみんなと同じがいい、と思い直した。

彼がなぜ「志願した」かというと、チームメイトである4番投手・静を生き残らせる策を思いついたからである。特攻前、最後の自由を許される日に野球をして、静に怪我させる。怪我させるだけなら他に方法はいくらでもあっただろう。なぜわざわざ野球という困難な手段を選んだかというと、野球をしたかったからに他ならない。即日帰郷して生き残ったとしても視力は失われ、野球は出来なくなる。ならば、と最後の試合はこの日と決めた。

静の、「みんなと野球出来ないなら、一番早くいなくなりたい」は、佐々木くんも近しいことを思っていたのかなと想像した。いや、どうだろう。そんなに女々しくないか。でも、仲間たちに対する愛情は間違いなくあったし、他者のために志願した彼がひとりぼっちでいなくなるのはあんまりだ。みんなと同じところに行ってほしい……そう願ってしまう。

彼は、みんなのことをよく気にかけていた。何かと一番に声をかけていたのが印象的だ。ふわっと落ち着いた話し方が知的で、優しい。それは野球の仕方にも徹底されており、フライ(飛球)の捕り方やスライディングがスマートで、彼の人間性を一目でよく理解出来た。見えているのかいないのか曖昧な眼差しが、カンッと球を打った瞬間だけ、はっきりと目を見開いて追うのが良かった。

最後の打席の前に、目を閉じていた回があった。周りの子たちが2番・秋之の打席を見守る中、彼ひとり目を閉じるものだから非常に驚いた。耳がいいんだ、と思った。ほとんど見えない裸眼でも野球が出来た理由が分かって震えたが、次に観た回と東京楽では目を開けていた。「自分の目で見ないと、もったいないだろ」という彼自身の気持ちそのままの表現だ。個人的には、どちらも観られて良かったなと思った。

眼鏡のくだり、めちゃくちゃ最高だったな……あんな眼鏡の使い方、初めて見ました。わたしも眼鏡や双眼鏡越しではなく裸眼で見たいとよく思うので、佐々木くんの気持ちはとても分かる。冒頭の断片的なキャラ紹介シーン、初見では「興奮してるのかな、おたくキャラなのかな」と勘違いしてしまったけど、完全に「悲しみ」でしたね。視力が衰えたことを肩震わせて泣いていた。勘違いして本当に申し訳ない。反省。

……と、佐々木くんだけで沢山書いてしまった。あとは、「こんなことなら別の学校に行けばよかった。甲子園で当たると思ってたから」の解釈だけが残っています。宿題。


家族の影響で、元々、スポーツの中では野球が一番好きで。ルールも分かるのでめちゃくちゃ楽しい舞台でした(何が起こっているのか理解できるように作られていたので、ルール知らない友人も楽しめたようです)。実際の球投げるのすごかった! 佐々木くん(また佐々木くん)が、一塁から三塁に走ったのが審判の声で分かった時、足も速いの!!?って興奮しました。足の速い人が好き……(小学生か?)

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