映画「窓ぎわのトットちゃん」
素晴らしかったです。
「トットちゃんが◯◯する話」と要約できない、あえて言うなら「あの時代に生きたトットちゃんの日々」を、魅力的な映画にされたのが本当に素晴らしい。
セリフにしなくても伝わる、と観客を信用した作り。観客に考えさせ興味をもたせて引っ張っている。
当時の生活描写が丹念で、貴重な映像になっている。見たことないものが沢山で、興味深い(パンを焼くやつとか)。
良いとこのお嬢さんだろうがなんだろうが、誰もが戦争を体験したんだ。
※以下、ネタバレ多く含みます。
素敵なシーンが沢山あった。
序盤で好きなのは、トモエ学園に初登校したトットちゃんが校庭の平均台を渡るところ。動きが楽しくて可愛い。
そういう、落ち着きのない子どもの横道それた描写が忘れずに入っていて。
トットちゃんが脚立を取りに行って、つい周りのもので遊んじゃうシーンも愉快なんだけど、そこが実はのちに使う自転車(泰明ちゃん乗せるやつ)の前振りになっているのが上手すぎる。段取りを省くのが上手すぎる。
泰明ちゃん登場シーン全部良い。まじ、出会いから良いもんな……。
雨の中のリトミック素晴らしすぎた。あのシーンのためにBDが欲しい。泰明ちゃんの心と、美しい夜の町。しのびよる戦争。
トットちゃんが教会?から駆け出して町に出た時、戦争と死をワッッと見せるところ、とんでもなかったな。
彼の死因ははっきり描写されないが、わたし(綾奈)は最近、死はいつでもそばにあると実感したところだったので、この一連のシーンはすごく、解った。
死の間を駆け抜けるトットちゃん。
先生が追いかけてきたところまで描写したのは、「ちゃんと子どもを守る大人」を描きたかったのかな。
一番泣けたシーンは、トモエ学園が馬鹿にされた時、暴力じゃなくて歌で立ち向かうところ。
トットちゃんたちの魂が強くて、美しくて……。
泰明ちゃんが身をていして守ってくれるのも良かった。ウワー! ってなった。
木登りのシーン、泰明ちゃんの晴々とした表情と汗が素晴らしかった。本作、汗の表現にこだわりがある(背や脇に汗がしみてるとか)。
プールのシーンは、「性差がない」って制作意図なのかなと思った。泰明ちゃんの心象風景まで描かれたの嬉しかったな……。
のちの相撲のシーンで、「性差がない」解釈が強化されて、のけ反った。トットちゃんは他の男の子と結婚したいの!? 泰明ちゃんは……あっ(異性として意識してない)友達ってこと……? って考えた直後に泰明ちゃんが手をあげる、のが、まじで、すごい。泰明ちゃんの感情が手に取るように分かる(伝わる)。
外で遊ばず、ひとりで本を読んでいた泰明ちゃんが、危険だって止められるようなことに手をあげるの、まーーーじで変化。好きな女の子に、腕相撲で手加減されて泣いちゃうの良すぎた。
ふたりで自転車乗るのも良かったなぁ……こまになってぐるぐるするところも夢みたいに全部良かった。
ひとつひとつのシーンが本当に素敵で、宝物みたいな思い出ばかりで…… 映画館を出てしばらく、泰明ちゃんのこと思い浮かべるだけで泣けてしまった。泰明ちゃん……。
ひよこの死について語る泰明ちゃん、それ自分からの言葉でもあるんじゃない? と思いながら観てたけど、今、そう考えるだけで胸が詰まる。
パンフレットに載っている、泰明ちゃん役の方のコメントが素晴らしいので、ご興味ある方はぜひ。泰明ちゃん、声が本当に好きです。良い仕事をありがとうございます。
泰明ちゃんの表記を確認しようと公式HP見たら、キャラクター紹介に泰明ちゃんいなくてひっくり返った。
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